写真:中島 光行 ©Nakajima Mitsuyuki

京都の風土と職人技術が生み出す
伝統工芸品「京銘竹」の魅力

京銘竹のある
京都の街の日常
京都を歩けば、至る所で竹の美しさに出会います。茶室の天井、料亭の庭、伝統建築の軒先―これらを彩る竹材の多くが京都府の指定工芸品として正式に認定される「京銘竹」と呼ばれる、竹材加工技術です。
山に囲まれた京都の寒暖差が良質な竹を育み、この環境と職人の熟練した技術が出会うことで、京銘竹という特別な素材が生まれます。自然の竹を職人が丁寧に加工し、独特の色合いや質感を持つ美しい建材へと変化させるのです。
代表的なものに白竹、図面竹、錆竹、亀甲竹があります。京都の建築文化と深く結びついたこれらの竹材は、寺院から町家まで、京都の建物に趣を添える大切な役割を果たしています。

京銘竹の
置かれている状況
この伝統技術は今、転換点を迎えています。深刻な課題は職人の高齢化と後継者不足です。住宅様式の変化も大きな影響を与えています。1970年頃には床柱用の竹材だけで年間約20万本が生産されていましたが、現在はわずか200本程度まで減少しました。
また安価な合成素材の普及により価格競争が高まり、手間のかかる京銘竹を使う機会が減っています。こうした状況の中、京都の竹材業界では新たな取り組みが始まっています。伝統を守りながらも、現代のニーズに応える革新的なアプローチが模索されているのです。

京銘竹の
新しい可能性
近年、京銘竹は現代建築やインテリアデザインの分野でその美しさが見直されています。「白竹」を配した空間は無機質な現代建築に温かみを与え、上品な光沢で照明効果を高める役割も果たします。
また竹材は持続可能な建材としても再評価されています。さらに「防腐・防カビ加工」や「不燃加工」等の技術開発により、現代の建築基準法にも対応し、用途が大幅に拡大しています。
京銘竹の美しさは海外でも高く評価されており、2025年大阪万博のマレーシアパビリオンにも使用されるなど、日本の伝統技術として国際的なブランド価値を持つ素材として位置づけられつつあります。

四つの京銘竹
それぞれの美しさ
白竹、図面角竹、胡麻竹・錆竹、亀甲竹。それぞれが異なる製法により、独特の表情を持つ美しい素材に生まれ変わります。また、時間をかけて育まれる煤竹の魅力も味わい深いものです。
これらの詳しい製法や、それぞれの特徴や加工方法についてご紹介いたします。伝統技術が生み出す、京銘竹づくりの奥深い世界をぜひご覧ください。
京銘竹の技術は、単なる伝統工芸を超えて、現代社会が求める持続可能性と美しさを兼ね備えた素材として生まれ変わろうとしています。職人の手による温かみと、現代技術による精密さが融合することで、新たな価値を創造し続けているのです。
京銘竹ができるまで
竹林整備から乾燥、加工、仕上げに至るまで、職人の手と時間を重ねてこそ、京銘竹は空間にふさわしい姿となります。その加工工程をご紹介します。