竹枝穂垣
「竹枝穂垣」は、竹の枝部分をそのまま活かして束ね、垣根として構成したもので、竹垣の中でも自然味の強い、素朴で野趣あふれる意匠が特徴です。整えすぎない自然の形を尊重したこの垣は、人工的な直線や均整からあえて離れ、里山や雑木林のような景観と美しく調和する垣として愛されています。
構造としては、複数の竹の枝穂を束にして立て並べ、それを竹や丸太で上下から押さえて固定するという、非常に自然に寄り添った形式をとります。密に束ねることで目隠し効果も生まれますが、隙間をあえて残すことで「透け感」を楽しむような施工も可能です。
竹枝穂垣は、山野草の庭や雑木の庭、自然風の露地などに多く使われます。 明確な「境界」としての主張を避け、環境に溶け込む“背景”として機能するため、静けさや奥ゆかしさを大切にする空間に特に向いています。見た目は非常に自然な造形ですが、束ね方や留め方には職人の手仕事が求められ、粗くなりすぎず、美しく野趣を表現するためのバランス感覚が重要になります。年月とともに色が落ち着き、さらに景観になじんでいく姿もまた魅力のひとつです。