伊助のよもやま話
鯉のぼりと竹 五月になると、鯉のぼりをよく見たものです。今は少ないですが、ちょこちょこ見かけます。鯉のぼりを見ると、懐かしく昔が思い出されます。小歌で歌ったあの思い出、元気一杯のあの声、今も忘れることなく、口の中で歌っています。そのせいか、今も元気にさせてもらっています。 女の節句と男の節句、ふたつの大きな節句は、親たちが女の子は可愛らしく良いお嫁さんになるように、男の子は元気に育って出世するようにと夢を添えて願ってお祝いするのです。それを見て子どもたちは精進するようになっているのですが……。 もうひとつの思い出は、商売柄五月になると鯉のぼりの竹の配達と組み立てに追われて集中的に忙しかったことです。しかし、今では鯉のぼりの竿として一本の竹も出ません。町中では場所と高さの空間がありません。 お祝いに貰った鯉も軒先や物干しに吊るして──、干してある魚みたいです。 しかたないですが、親も子も、絵でもよいから、この日のことは忘れぬように行事をしていきましょう。おやのきもち、子どもの気持ちがいつまでも暖かく続くことを祈る日です。 寂しさを歌で我慢します──。 ♪ 甍(いらか)の波と雲の波、 重なる波の中空(なかぞら)を、 橘(たちばな)かおる朝風に、 高く泳ぐや、鯉のぼり。 ♪ |