伊助のよもやま話
雷竹 店の若い衆が竹を整理していた。 その中に、ところどころに黒茶の焼け色の付いた竹が混じっていた。私は思わず「雷竹だな」と言って、手を止めさせ雷竹について説明した。 雷が発生して、落ちる所を探している中で、竹を選んだ。 たくさんある竹の中で、よく伸びた少し太めの竹を選んで落ちた。その時の焼傷が模様になって残っている。稲妻がよく絵に描かれるそのままの模様である。 ジグザグと竹の先の上から下まで模様が付いて、下にいくほど色は薄くなっている。焼かれて付いた模様は丸い竹を回るように降りている。 竹としては珍品で面白い物ではあるが、買い手がつかない。 なぜなら雷が落ちた竹「落ちる」という事で縁起をかついでか、使われることがない。 この竹にしてみたら迷惑な話だが、自然の出来事に文句は言えない。珍しいので皆に見せたいなと思ったが、その機会もなく、捨てられゴミと消えて行った。 竹として生まれ立派に成長したのに、思わぬことで役目を終え消えていく。 私たちにもよくある事だが、それでも元気に生きて行く。それでも元気に生きて行くよ。 落ちて彼女の袖ぬらす。(昔の航空隊の歌) |